2025-07

第4週『買い取ってない品』

第4週『買い取ってない品』 第4話 ― 売られるはずのなかったもの ―

午後2時を回ったころ、店の戸が小さく鳴った。入ってきたのは、落ち着いた雰囲気の30代の女性だった。黒のタートルネックにベージュのスカート、手には何も持っていない。ただ、視線は迷うことなくまっすぐ陶器棚へ向かっていった。そして、迷いなく、例の...
第4週『買い取ってない品』

第4週『買い取ってない品』 第3話 ― 皿に似た模様 ―

「この筆跡、見たことがある気がするんです」貼り紙をそっと差し出すと、店主の柴田はしばらく無言で眺めていた。やがて、ため息のように静かに答えた。「……似てるな。志乃に」「志乃……さん?」「5年前まで、ここで働いていた子だ。桐山志乃。手先が器用...
第4週『買い取ってない品』

第4週『買い取ってない品』 第2話 ― 名前のない買い取り記録 ―

午後、ひと段落した店内で、山瀬亜希は買い取り台帳を再度めくっていた。日付順に記載された品目、数量、買い取り価格、そして依頼主の名前――だが、やはり「青磁・梅紋小皿」の記録は、どこにもない。そのとき、パートの小坂朋子が戻ってきた。「ただいま〜...
第4週『買い取ってない品』

第4週『買い取ってない品』 第1話 ― 棚にあったはずのない品 ―

彦根城から少し歩いた、静かな商店街の裏手。古道具屋「つるや」は、木の看板と小さな丸窓が目印の、時間が止まったような店だった。**山瀬亜希(やませ・あき)**は、その店で働きはじめて一ヶ月。古道具の知識はまだ浅いが、品物の扱いには自信があった...
第3週『宿帳の余白』

第3週『宿帳の余白』 第5話 ― 書かないという選択 ―

名前を消したのは、赦すためでも、忘れるためでもない。それは、ふたりにとっての静かな“終わり方”だった。
第3週『宿帳の余白』

第3週『宿帳の余白』 第4話 ― 一行の違和感 ―

女将が語る“名前を消した宿泊客”の記憶。残さないという行為にこそ、強い感情が込められることがある。
第3週『宿帳の余白』

第3週『宿帳の余白』 第3話 ― 同じ景色を見ていた人 ―

忘れ物のメモに残されていたのは、「許し」を拒むような一行の言葉。ふたりが見ていた景色は、きっと同じではなかった──。
第3週『宿帳の余白』

第3週『宿帳の余白』 第2話 ― 書かれなかった名前 ―

深夜の廊下に響いた、ひとりごとのような謝罪の声。名前を“書かなかった”のではなく、“消した”可能性が浮かび上がる。
第3週『宿帳の余白』

第3週『宿帳の余白』 第1話 ― 宿帳の余白 ―

民宿の宿帳にだけ残された、不自然な“名前の空白”。それは単なる記入漏れではなく、誰かの感情が置き去りにされた痕跡だった──。
第2週『名前のない約束』

第2週『名前のない約束』 第5話 ― 名前のない約束 ―

お守りに込められていた一行の言葉が、母と子の心を動かす。願いではなく、祈りだった――それがすべてを静かに解きほぐす。