第6週『二人で書いた誓い』 第2話 ― 破られたルール ―

第6週『二人で書いた誓い』

交換日記を開くと、3ページ目にだけ、日付が抜けていた。
そのページには、かつて中学時代に二人で決めた“ルール”が、子どもっぽい文字で並んでいた。

① 日記は1日おきに交代で書くこと
② 嘘は書かないこと
③ 他の誰にも見せないこと

懐かしさに胸を締め付けられながらも、麻子はある違和感に眉をひそめた。

「……こんな文、書いた覚えない」

ルールの下に、もう一文、青いインクで追加されていたのだ。

④ 約束を破ったら、ここにはもう何も書かない。

書いたのは誰だろう? それとも、自分が忘れてしまっているだけ?
麻子は自分の筆跡と照らし合わせたが、どうしても思い出せなかった。

***

その夜、麻子は地元のカフェ「しろつめ草」で、旧友の木島瑠璃と再会した。
中学以来の再会だったが、瑠璃の第一声はあっさりしたものだった。

「ひさしぶり。なんか、変わんないね」

「うん。……そっちも」

形だけの会話。ぎこちない笑顔。心の距離は埋まらない。

「ねえ、交換日記って、覚えてる?」

そう切り出すと、瑠璃は一瞬、目を伏せた。

「うん、まあ……」

「このページ、見覚えある?」

スマホで撮っておいた日記のページを見せると、瑠璃はわずかに眉を動かした。

「……そのルール、最後のは私が書いたかも」

「どういう意味?」

「“破られたから”ってことだよ、きっと。……あなたに」

一瞬、時が止まったようだった。

麻子は何も言えなかった。思い当たることが、何もなかったからだ。

「でも、もういいの。昔の話だし。こっちも、大人になっちゃったしね」

それは、許しだったのだろうか。
それとも、諦めだったのか。

麻子の心に、静かなざわめきが残ったまま、会話は自然と終わりを迎えた。

***

帰宅後、再び交換日記を開く。
その「ルールのページ」の裏側に、インクのにじみのようなものがあった。
光にかざすと、かすかな文字が浮かび上がる。

ほんとは、ずっと言いたかった。
あのとき、裏切られたって思ったこと。
でも、ほんとうは――。

文は、そこまでで途切れていた。

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第6週 『二人で書いた誓い』

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